「SIerから人材流出が止まらない」などと言われがちですが、実際問題、それは嘘です。
NTTデータの離職率も4%程度ですし、伊藤忠テクノソリューションズも5%程度。
「身の回りでは流出しているように見えて、実は流出していない」というのが実態でしょう。
とはいえ、離職率は「全体」の統計です。
若手に絞って離職率を見てみると、全体の離職率よりも大きくなるのはおそらく間違いありません。
SIerに長年いた人は「現在の条件より良い条件」では転職できないので、基本的に会社から出ようとはしません。
一方で若手からすると、SIerほどモチベートされない職場はありません。
SIerで使っている技術は世の中の常識から20年遅れです。
業務は資料作成ばかりで、残業が多く、得られるものが給料以外になく、中身のよくわからないシステムの保守運用にこき使われ、毎日疲れ切って死にそうです。
それでも給料が上がっていくから、雇用が安定しているからと毎日頑張って仕事をするわけです。
SIerに長くいると市場で求められるスキルとの乖離も痛感するので、転職に踏み切れない、という事情もあります。
SIerに長く居座る、手も足も頭も動かない重鎮(老害)に若手がこき使われ、疲弊した末に次の老害が生まれていくのがSIerの老害再生産システムです。
「若手のみ」にフォーカスを当てた統計データは見つからないのですが、筆者の感覚では20代から30代だと15%くらいは辞めているような気がします。
同期が300人いたら10年以内に50人は辞める感じです。
もしかしたらもうちょっと辞めてるかもしれません。
一方で、40代を過ぎると、そこから辞める人はほとんどいません。
転職先がないからです。
SIerの40代以降の社員の給料はかなり高いです。
よほどの無能でない限り、年収1000万は超えるでしょう。
しかしながら、SIerで40歳を迎えた社員は「会社の外」でできることがありません。
いつまでもどこまでも「社内標準」に従って仕事をしてきたからです。
「社内標準」の仕事の仕方が染み付いているからです。
そんなものは当然、社外では通用しません。
「年収を大幅に下げる以外に転職の選択肢がない」
からこそ、40代以降のSIer社員は転職しません。
皆さんはそうなる前にさっさとSIerから離れなければいけません。
SIer以外のIT企業は転職が当たり前
ウェブ系の企業の面接官の方と話して、「これまで転職したことがない」という人に出会ったことがありません。
20人くらいと話して一人もいませんでした。
プロパーを避けているのではなく、おそらくは「みんなカジュアルに転職している」のでしょう。
ある企業で専門性を身に付け、その専門性を持って別の企業に転職していくのがウェブの働き方です。
同じ企業でずっと働き続けるのはむしろ「能力の幅が狭い人」に見られます。
転職活動をすると、同じ会社で7年以上働いていると驚かれます。
「そ、そんなに長く働いたんですか!」
と。
逆にSIerでは一つのシステムを5年、10年と見ている人はたくさんいます。
色々な企業で経験を積んだ人と、10年間同じシステムの保守・運用ばかりしてきた人、どちらのスキルが高いかは考えるまでもないですよね。
給料はSIerの方が高いんですけどね。スキルは低いです。
同じ業務を10年続けることのヤバさ
転職活動してハッと気付いたのは、「同じシステムを5年も10年も見続けるのはやばい」ということです。
代わり映えのないシステムをひたすらメンテナンスして、やることもベンダーコントロールだったり、なんとかプロジェクトの「計画書の作成」だったりします。
これで何か身に付いているかというと、何も身に付きません。
その会社の特定の顧客にしか使えない「業務知識」だけが残り、あとは資料作成だったり、社内の知り合いが増えることによる調整能力だったりが向上するだけで、社外に持ち出せるスキルがありません。
会社に縛られるだけでなく、特定の顧客や特定のシステムに縛り付けられて、「それ以外」の選択肢がなくなってくるのです。
人間、選択の自由がないのは不幸ですよ。
SIerで同じ業務をずっとやっていてもスキルの幅は広がりません。
ごく稀に「新しいことにチャレンジしていこう」という気概のある部署に配属されることもありますが、そういうガチャに振り回されても人生は切り開けません。
運に身を任せるのではなく、自分で道を切り拓くべきだと思います。
そのためには、自分のやりたいことができる転職しかありません。
そうやって、SIerの若手社員は流出していいくのです。
SIerで古いシステムのモダナイゼーション(刷新)担当になったら、すぐに逃げなさい
仕事を辞める理由はシンプル
仕事を辞める理由は「辛いから」「不満があったから」でしかありません。
SIerは構造的に不満が生まれやすく、社員が辛くなるようにできています。
私は長年SIerで働いてきましたが、楽しそうに働いている人は一人も見たことがありません。
「イキイキワクワクと働けるような職場を作ろう」と頑張っている人はいましたが、現場でイキイキしている人は誰一人としていませんでした。
たったの一人もです。
誰もワクワクしないし、誰もイキイキしない。
みんな嫌そうに、そして辛そうに、
「今月は残業しすぎてやばいっすよ」
みたいな「辛さ自慢」をしています。
まじで気持ち悪いです。
残業時間で仕事を語るのではなく、社内のゴシップを飲みの肴にするでもなく、技術で未来を変える仕事をしましょう。
一度きりの人生はもっと楽しく幸せであるべきです。
少なくとも私はそう思います。