SIerの生産性が低い理由をハード面とソフト面から語る

富士通やNEC、NTTデータや野村総合研究所、大塚商会のような会社を「SIer」と呼びます。

システム開発をサービスとして提供する会社ですね。

私はいわゆる大手SIerで仕事をしてきました。

外から見ると、

「売上高 ÷ 従業員数」

といった数値で生産性を算出するため、SIerの生産性は割と高く出ます。

これはSIer社員の働き方が効率的という意味ではなく、顧客からぼったくっているからです。

顧客からぼったくればぼったくるほど、数値上の生産性は上がります。

就活などでは、「労働生産性が高いということは、中の社員が優秀だということ」みたいに説明されますが、数値上の「労働生産性」は中の社員の優秀さとは結びつきません。

どんなビジネスをやっているかによって労働生産性の数値は変わってくるからです。

生産性分析

中に入ってみると、「SIer社員」の生産性は非常に低いです。

骨の髄まで大企業病に侵されていて、もはや手の施しようがないレベルに達しています。

何をするにも会議と承認が必要で、社員がクビにならないもんだから何も生産しない老人が大量に跋扈しています。

「老人に相談してお墨付きをもらう」という老人会のお守りのような業務に週の半分ほどの工数が費やされ、顧客のために何かを生み出している時間は全労働時間の10%もありません。

顧客のために使っている時間は実質10%もないのですが、中の人は「私の仕事は全て、顧客のためにある!」と思い込んでいます。

自分が病気であることに気付いていない重病人のようなものです。

無症状のコロナ患者のようなもので、害悪ですらあります。

SIerの生産性の低さ、非効率さは様々ですが、この記事では「ハード」と「ソフト」に分けて生産性が低い理由を見ていきます。

まずはハード面からです。

ハード面での生産性の低さ

どこのSIerでも上げられますが、ハード面での環境は最悪です。

  • PCのスペックが低い
  • 集中できない環境
  • セキュリティルールが厳しすぎる

PCのスペックが低い

SIerで使うパソコンのスペックは最低レベルです。

メモリ4GBのWindows PCで、最低限のソフトしかインストールできません。

2015年頃からやっとSSDが使われ始めたのですが、容量は128GBでした。

容量を空けるために古いメールを削除したり、過去のドキュメントを削除するのに時間が取られます。

会社のPCが遅すぎる

コロナ後は「政府の指導により」テレワークが普及しました。

「政府の指導により」が強調されているのは、SIerでは元々テレワークを普及させようという動きがあったにも関わらず、ことごとく頓挫してきたからです。

上から言われないと変われないのです。

それで、テレワーク普及後は、「シンクライアント環境」での作業が強制されます。

リモートデスクトップでの作業です。

これがまたヌルヌル動いて使いづらいのです。

割り当てられたメモリは4GB。開発用のソフトウェアのインストールも制限されています。

このような劣悪なPCでの作業を月額単価200万円の社員が強要されているのです。

集中できない環境

SIerの社内環境は集中できません。

周りの人間は会議ばかりしているので、とにかくやかましいのです。

横でテレビ会議が始まり、後ろの会議室で大声で喋り、四六時中他人の声がします。

中には怒声だったり誰かを叱責するような声も混じっているので、いちいち集中が削がれます。

電話も鳴ります。

「黙って集中する」とは程遠い環境です。

セキュリティルールが厳しすぎる

何をするにも申請が必要なのはSIerの特徴ですが、「どんな小さなリスクも大げさに扱う」のもSIerです。

AWS、Slack、Githubは当然使えません。

開発環境用のサーバはギリギリのメモリ、ギリギリの容量で設定されるため、いつも開発者が困っています。

クラウドで開発するといっても、開発者がすぐにリソースを調整できるわけではありません。

いちいちクラウドチームなる人物に相談して、リソースの拡張を依頼しなければなりません。

たかが開発環境のリソースを拡張するのに、理由を説明して、作業依頼をして、調整しなければいけません。

馬鹿だと思います。

SIerで絶対に技術力が身に付かない理由

ソフト面での生産性の低さ

ソフト面での問題は上げればキリがないのですが、以下のようなものがあります。

  • 無駄な会議が多すぎる
  • 時代遅れの標準化
  • 資料作りすぎ問題
  • 開発者への理解がない
  • 多重下請け構造による伝言ゲーム
  • 社員のスキルレベルが低い
  • 社員のスキルレベルが低い
  • 社員の高齢化・年功序列
  • 仕組みより根性

無駄な会議が多すぎる

SIerの業務は会議ばかりです。

朝から晩までずっと会議しています。

報告とレビュー、認識合わせという名の調整会議に毎日5時間以上費やしています。

会議が多い理由は、会議を開くことで「関係者を巻き込み、責任を分散させることができる」からです。

一人で何も決めることができないので、いちいち周囲に確認を取って、承認を得ます。

いちいち承認を得なければ何も進まない、社員一人ひとりが自分で判断できないので、仕事が進みません。

何も生み出さない老人によるレビューも必要です。

レビューを受けると細々と(役に立たない)指摘が入るので、修正と再レビューに時間がかかります。

開発などの作業は下請けに投げるので、下請けの報告を受けたり、作業の説明を受けるのにも時間がかかります。

報告する、報告を受ける、レビューする、レビューを受ける…という繰り返しがSIerで過ごす時間の8割を占めます。

報告資料のフォーマットはExcelとPowerPointなので、必然的にExcelとPowerPointをいじっている時間が長くなります。

時代遅れの標準化

SIerでは開発工程の全てが標準化されています。

「標準化されたルールに則って開発したらうまくいく」というものです。

ルールは付け加えるのは簡単ですが、削るのは難しいものです。

それに標準化のルールは20年くらい前から作られているもので、現代の開発には全くマッチしない化石のような「縛り」になっています。

肥大化し、陳腐化した標準化ルールを思考停止で強制されるため、SIerの開発効率は一切上がりません。

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資料作りすぎ問題

SIerでは資料作りに命をかけます。

関わる人数が多いため、認識を共有するためにいちいちドキュメントに残さなければならないのです。

小さなチームだったらホワイトボードに書いて済ませるところをいちいちドキュメントに残します。

そのドキュメントが「報告ありきのドキュメント」になっており、読むだけでは理解できません。

まさに「作ることが目的となった本末転倒のドキュメント」です。

ドキュメントが正義で、ドキュメントを残すことが仕事だと思っている人が大多数です。

中の社員はドキュメントを作れば何でも解決すると思っているフシがあります。

SIerの仕事は「作家」です。

大量のドキュメント制作に追われます。

制作したドキュメントは「レビュー」を受けなければならず、レビューや修正にも時間がかかります。

そうやって作られたドキュメントは、やがて時が経ち、陳腐化していきます。

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開発者への理解がない

SIerの社員は開発者ではありません。

ウェブ系では当たり前の「開発者への配慮」がありません。

ディスプレイを用意したり、キーボードや快適な椅子を用意するなど考えもしません。

上に立つ人間が会議しかしていないからです。

意思決定に関わる人間が開発者とは縁遠い人間であるため、開発者の環境は一向に向上しません。

それどころか秘伝のタレのように珍妙なルールが追加されて、どんどん悪化しているようにも思えます。

多重下請け構造による伝言ゲーム

SIerの本質は伝言ゲームです。

あの人から報告を受けた話を、また別の人に報告していきます。

多重下請け構造により、下から上への報告が続きます。

そして報告を重ねるごとに都合の良いように情報が捻じ曲げられていきます。

SIer社員はソースコードが読めないため、問題の本質は理解できません。

受けた報告を元に論理的に推論し、何かを判断します。

それはそれで大したものなのですが、頭が良さそうに見える割には実際の問題解決には役に立たないというのが実情です。

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社員の高齢化・年功序列

社員がクビにならないため、上の方に働かない社員が詰まっています。

働かない社員は何をするかというと、会議に参加してご意見番のように何かを発言するのです。

実際に問題を解決するのではなく、口をだすためだけに存在するような高齢者員を大量に抱えています。

こういう連中のお守りのために、膨大な工数を費やしています。

高齢化は今後も進み続けます。

老人は手を動かしません。

手を動かさない老人対応のために若手、中堅の社員は疲弊しています。

仕組みより根性

SIerでは残業時間を気にしないので、何か問題が発生するととりあえず根性で解決しようとします。

仕組みを改善しようとはしません。

残業時間のマンパワーで問題を解決します。

ゼロベースで「無駄なことをやっているのではないか」と反省することはなく、マンパワーを投入して何とかしようとします。

システム開発は人を増やせば生産性が上がるわけではありません。

むしろ一人あたりの生産性は落ちていきます。

ですが、残業と膨大な工数投入によって、結局何とかなることが多いので、本質的な問題は放置されたままで、生産性は低いままになるのです。

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