SI企業の中で見られる高齢社員と若手の意識の分断

OpenWorkなどの転職サイトの口コミを見ると、若手がSIerの業務のあり方について冷ややかな目で見ているのに対し、勤続年数20年以上、40歳以上の管理職は会社の文化に誇りを持っているのがわかる。

20年間、転職もせずに同じ会社で働くと、どんな人も会社の文化に染まる。
会社の価値観が正しいと信じて、間違っていないと思い込む。

そうじゃないと、自分の20年を否定することになってしまうからだ。

長い間転職せずに一つの会社にいると、会社を客観視できなくなるのだ。

一方で、勤続年数5年未満の若手には、SIerに蔓延る大企業病を危惧する声も少なくない。

「本当にこんな仕事をやっていて大丈夫なのか?」

という不安は、多くの若手社員が共通して持っている危機意識でもある。

私が入社した2000年代後半はSIerの価値観に疑問を持つ人は少なかった。

「プロジェクトマネジメント」という「上流工程」の仕事に携わるのが華だと思っていたし、みんなそう信じていた。

2013年頃にソーシャルゲームバブルが起こり、

「自分で手を動かして物を作れるプログラマー」

の方が価値があるんじゃないか?と価値観を揺さぶられた。

そんな周囲の変化はもちろん、SIerの中にいるおっさん社員には響かない。
だが若手への衝撃は大きかった。

その頃はスマホの普及が急速に進み、若手会社員でスマホを使っていない人はほとんどいなくなった。

「スマートフォンで動くアプリを使って、大金持ちになる人もいる」

「アプリを作って一攫千金を得た若者がいる」

ツイッターやはてなブックマークで夢を叶えたプログラマーの話を読んで、SIerの中で主流となっている

「プログラミングは中国人にやらせる仕事」

のような価値観に疑問を抱き始めた。

それからの、近年の機械学習エンジニアの報酬の高騰や技術力のある社員のGAFAへの引き抜きである。

あれ?プロジェクトマネジメントだけしていても厳しいんじゃね?

コンピューターサイエンスわかってないとGAFAで働けなくね?

というか、自分たちが作ってるシステム、めっちゃショボくない?

みたいに、これまで殿様商売で気付かなかった自分たちの奢りに気付き始めたのが最近のことだ。

ここまで「若手と年配社員の意識の分断」という体で記事を書き進めてきたが、実態は少し異なる。

若手の中にも「SIerの考え方に染まっている人」は多い。
それは当たり前のことで、普通は自分が所属する企業の価値観を肯定的に捉えるものだ。

「え、この会社、本当に大丈夫なの?」

と疑問を抱くタイプの人の多くは、ツイッターやはてな、Qiitaなどに強く影響を受けている若手社員である。

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SIerのテクノロジー軽視文化の原因

SIer社員には技術力を軽視する傾向が強い。

特にプログラマーに対する偏見は根強い。

SIerの中にいると、多重下請け構造、すなわち上流工程から下流工程のピラミッドを意識せずにはいられない。

どちらが偉いとか偉くないとかはないはずなのに、上流工程が「発注側」になるため、なんだか「上流工程」を担当するのが偉く、「下流工程は下請けの仕事」みたいな価値観が支配的だ。

とはいえ、

「新しい技術を取り入れなければいけないな」

「自分たちも変わらなければ危ないな」

と考え始めている管理職も増えてきているのは事実である。

特にしっかり出世して、会社の未来を考える立場にある中年社員の危機感は強い。

問題は、たいした出世もしない、勉強もしない、実力もない、でも偉そうな30代後半〜40代半ばの社員である。

彼らは変われない。

もはや新しいことを学ぶほどの知的体力は残されておらず、「今までのやり方」を踏襲するしか生き残る術はない。

ボリューム層が「古い価値観」に染まっている組織が変わるのは容易ではない。

皆、自分の利害がいちばん大事なのだ。

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長期的に見ると、若手優秀層の転職は増えるはず

長い目で見ると、SIerからの人材流出は増えると思われる。
特に理系の優秀な若手社員はSIerから早期に脱出するパターンが増えてくるように思う。

会社説明会ではキラキラした「大きな仕事」の話を聞いて、期待して会社に入ったものの、会社の中でやるのはExcelに証跡を貼り付けるコピー&ペーストばかり。

中にいる人は機械学習なんて知らないし、退屈な作業をPythonにやらせることもできない。

「え、こいつらマジでショボくね?」

と、SIer社員の平均技術レベルが情報系の大学生以下であることに疑問を抱いた若手社員は、たぶんさっさと転職する。

しかしながら、幸か不幸か、SI会社の給料はウェブ系の企業よりも高い。
収益基盤をたくさんのお金を出してくれるお客様に支えられているからだ。

だから、自分の市場価値が上がらなくても、技術力が身に付かなくても、目先の昇給が捨てられずに転職できない人が、一定数SIerに残るはずだ。

その中には優秀な人ももちろんいるわけで、「高い給料を払える限り、SIerの若手の流出は限定的」だともいえる。

やはりお金の問題は大きいのだ。

ただ、お金にとらわれていつまでも何のスキルも身に付かないSIerにいたら、将来会社が傾いたときに困るのは自分なわけで、

「自分のバリューよりも明らかに高い給料をもらっている」

と感じてしまっている人は、本当は早めに転職を経験した方がいい。

自分の市場価値と給料が釣り合っていなければ、長い目で見たらいつかそのツケを払わされることになる。

それが40代になってからだと悲惨だ。
市場の目も厳しく、40代で「言われた通りの管理しかできない社員」を必要とする会社は少ない。

早めにスキルを身に付けて、できれば転職を経験して、自分の市場価値と給与が釣り合った状態で努力を続けていくのが得策だろう。