「SIerはやばい」とよく言われますが、ウェブ上にある多くの記事は
「外から見たSIerのやばさ」
を語ったもので、“SIer中の人”がSIerのやばさを語る記事は少ないのではないでしょうか。
その理由はいくつかあります。
- SIer社員にはブログなどで情報発信する文化がない
- SIerの中にいるとSI文化に染まってしまうので、何がやばいのか理解できない
- 所属する組織を表立って批判するのは気が引ける
- 忙しくてネットで情報発信している暇がないし、デメリットしかない
SIerの中の人が「リアルな事情」を語るインセンティブがないわけです。
そんな事情もあり、外からは「SIerやべーやべー」と言われてますが、結局どんな感じでやばいのかはなかなか伝わらないようにも見えます。
なので今回は、SIerの中にいる私が、SIerの何がやばいのかを赤裸々に語ろうと思います。
労働時間が長すぎてやばい
よく言われるのは「労働時間がやばい」という点です。
オープンワークでNTTデータやアクセンチュア、NRIの残業時間を見てもらえばわかりますが、月間残業時間は40時間を超えています。
オープンワークで「月間40時間」と書かれているのを鵜呑みにして、「ああ、40時間くらいならなんとかなるな」と考えてはいけません。
オープンワークの数字は転職活動する余裕のある人で「月間40時間」であって、実際はもっと残業してます。
また、会社によっては「社内の残業の規制をかいくぐるためにわざと業務時間を短くして勤務登録する」みたいなことも普通に行われているため、実態は
「オープンワークの数字 + 10〜20時間」
くらいが目安となります。
私が勤めていた大手SIerでは月末になると「今月は残業時間がやばいっすよ」みたいな、自虐なのかアピールなのかわからない会話が繰り広げられていました。
心底気持ち悪いと思ってました。
またプロジェクトマネージャーも「原則、残業を前提に計画を立てている」ため、プロジェクトメンバー内では「残業しないのがおかしい空気」になります。
20時まで残るのは当たり前。
定時で帰ったら「サボり」
18時〜19時の間に帰ると「早帰り」と言われます。
新人の頃は、「20時からの合コンに間に合わせるため、トイレに行くふりして会社を脱出する」みたいなことをやっている人がいました。
全然本質的じゃないですね。
当然、会社の飲み会の飲み会があっても全員遅刻してきます。
飲み会を企画するくせに、店を取っておいてと新人や年下の人間に依頼するくせに、依頼した人間が遅刻するのです。
それでいて、誰も悪いと思ってない。1時間くらい平気で遅れてきます。
本当に頭がおかしいです。馬鹿なのでしょう。
時間通りに飲み会に参加するとサボっていると思われるからです。
新人に店を予約させ、誰も時間通りに参加しない先輩社員を見て、「こういう大人には絶対になりたくない」と感じていました。
残業が当たり前の環境に染まってしまうと、他人の時間を奪うことに何の抵抗も感じなくなってしまうのです。
「仕事だから」といえば全てが正当化されると皆が勘違いしていました。
精神まで会社に侵されている、まさに「社畜」といえるでしょう。
社畜はその精神に宿るのです。
ちなみに私が異動した先のプロジェクトマネージャーが、「君の歓迎会をしたい。店を予約しておいてくれないか?」と言われ、店を予約したのですが、20時開始のはずがそのPMが来たのは21時でした。
歓迎会と称して新メンバーに店を予約させ、遅刻してきて悪びれもせず、遅れてきたら延々とワーカホリックの仕事論を語り、なんと!会計は割り勘でした。
その翌日から転職活動を始めました。
上のリンクは『迷宮ブラックカンパニー』という漫画の紹介です。
SIerが嫌いな全ての社畜に読んでほしい漫画です。
「パートナー(協力会社)が働く限り、プロパーは帰るな」
仕事が大好きで、長時間労働を美徳とするプロジェクトマネージャーの下で働いていたときに言われました。
「俺たちが見守っているからこそ、協力会社の皆さんは頑張れるんだ。
協力会社の方の連絡にはいついかなるときでもすぐに反応できるようにしろ。
社員はいちばん最後まで仕事するのが基本だ」
こういう発言に対して
「すげー!さすが先輩!見習って頑張ろう!」
と思えるのは昭和から平成中期までです。
今どきの労働者はこう感じます。
「馬鹿かお前。お前が一人で残れ」
常に全力疾走を課し、限界まで残業させようとするプロジェクトマネージャーが後を絶ちません。
残業を前提に、社員が無限に働くことを前提とするから、無駄を削減する努力をしなくなるのです。
「残業しないでプロジェクトを進める」
と決意できるプロジェクトマネージャーには今まで出会ったことがありません。
全員、もれなく、全てのマネージャーが月に40〜60時間程度の残業を前提として仕事を組み立てていました。
18時以降だろうと当然のように会議が入り、
「仕事が最優先なんだから当たり前だろ?」
みたいな空気が漂ってました。
私もそういう空気に染まっていたこともありましたが、今、冷静に振り返ると異常です。
裁量労働をいいことに、労働者が馬鹿みたいにタダ働きするのをいいことに、他人の大切な時間を搾取するゴミ。
他人の時間を搾取することを悪いと思ってもいないのでタチが悪い。
SIerにはこういう不愉快な奴がたくさんいました。
17時から18時半まで会議をやって、「他の部署への問い合わせ」が必要な業務があったとき。
「他部署の方にも申し訳ないので、明日の朝一番に連絡します」
と言ったら「すぐに電話しろよ」と説教してきたPMもいました。
電話して、その日の19時から会議を入れて、その後に転職活動をしました。馬鹿と一緒に働いてはいけません。
ストレスが溜まるからです。無駄なストレスを溜めるくらいならさっさと転職するべきです。
技術知識が無さすぎてやばい
大手SIerのプロパー社員に技術知識はありません。
理系の大学3年生以下の技術知識でシステム開発のプロジェクトマネージャーをやっています。
SIerの平均的な社員の技術レベルは以下です。
- Gitを使えない
- バージョン管理システムを知らない
- 2000年代初頭に作られた、謎の社内リリース管理システムを使っている
- オブジェクト指向という単語だけ知って、万能ツールのように考えている
- AWSを使えば「DX」だと思っている
- 運用チームがDevOpsという単語を知らない
- 99%のチームではテストを書かない
- 手作業・目視でテストを繰り返し、Excelにエビデンスを貼る
- 1年で1行もコードを書かない
- 「社内標準」が10年遅れ
- 2020年になってようやく「アジャイル」に挑戦しようとしている
- アジャイルの研修を受けて、誰もプロジェクトに導入しない
- 社内のPCにVSCodeをインストールできない
- 社内標準PCのメモリが4GB
- 社内プロキシに阻まれてDockerが使えない
- GitHubにアクセス禁止
「技術的な内容に触れるのは我々の仕事ではない。手を動かすように指示するのが高単価たる我々の仕事だ」
と誇らしげに語る社員はたくさんいました。
Excel資料に書かれた報告書を「レビュー」して「指摘」するのがSIer社員の仕事です。
ちなみにコードレビューはしません。コードレビューをする人は一人も見たことがありませんし、誰もできないと思います。
会議が多すぎてやばい
SIer社員の一日は会議に始まり会議に終わります。
年齢が上がれば上がるほど会議が増えて、30代で一日平均6時間。
40代で平均7時間は会議してます。
とにかく一日のほとんどが会議で終わり、会議後の夜から資料の作成などの自分の作業に取り掛かります。
会議は疲れます。
ファシリテートするとなおさら疲れます。
一日中会議して、話を聞いたり報告したり、そんな風に日中で疲弊しきってしまうので、夜に新しい技術の勉強なんてできません。
というか、SIerの社員は基本的には全員勉強不足です。勉強している余裕なんてないからです。
ただ、根は真面目で努力家が多いので、「情報処理試験」だけは一生懸命勉強して取りに行きます。
社内で取得が推奨されているからです。
私がSIerで見た中で最も無能な人は、高度情報処理試験をほぼコンプリートしていた人でした。
真面目で思考停止している人ほど、組織にとって迷惑な存在であるということでもあります。
資料作りすぎてやばい
大手SIerのプロパー社員の業務は「作家」です。
以下のような資料を一年中作るのが仕事です。
- 報告書
- 計画書
- 進捗資料
- 課題表(Excel)
- 議事録
- 設計書
一年中ドキュメントを作り、それを報告し、レビューし、レビューされます。
彼らの仕事は「エンジニア」ではありません。
「作家」です。
大手SIerには「エンジニア」になるつもりで就職してはいけません。
エンジニアリングなんて一切しないからです。
「作家」になるつもりで就職しましょう。
生産性が低いのに儲かってやばい
大手SIerの利益はお客様に支えられています。
太い顧客をガッチリと掴んでいるので、どんなにくだらない業務を行っていたとしても、なかなか土台は崩れません。
お客様も業務システムを抜本的に変えるのはリスクが高く、これまでの慣習もあるため、SIerにお金を払い続けなければならないのです。
お客様の中にも保守的な人は多く「これまでのシステムに慣れてるんだから新しいことなんてしたくない」という人は多いです。
そんなお客様のお陰で、SIerはどんなに無駄なことをやっていてもたくさんのお金が流れ込んできます。
SIerの中にいる社員は「我々の仕事は付加価値が高い。だからこんなに給料が高いんだ」と言っていました。
ですが私はどう考えても、どんなに考えても、SIerの仕事に付加価値があるとは思えませんでした。
何も生み出していないように感じていたからです。
計画書を作り、プロジェクトがしっかりと進むように管理して、適切な利害関係者と調整する作業に価値がないとはいいません。
ですが、その作業の生産性が高いかというとそうでもありません。
高度で難しいことをしているかというと、そうではありません。
資料を作り、ダラダラと偉い人のレビューと承認をもらいにいく業務に価値があるのではなく、SIerの仕事が儲かっているのは単に、お客様に近い位置にいるからです。
太いお客様に支えられているからです。
そんなことも忘れて、
「自分たちはすごいことをやっているから高給なんだぞう」
と嘯くSIer社員を私は軽蔑していました。
「高給だから俺たちは生産性が高い」というなら、自社に抱えた「他人に丸投げすることしかできない高齢社員の存在」をどう説明するのでしょうか。
勘違いも甚だしいでしょう。
転職市場で評価されなくてやばい
これまで散々書いてきたように、SIerの業務は「作家業」です。
転職市場で評価されるスキルは身に付かないので、転職活動では頑張って「盛る」必要があります。
「プロジェクトをマネジメントできます!」
「タスクの調整をして、円滑に開発を回すことができます!」
「チームを作っていけます!」
みたいなことをアピールします。
毎日毎日残業して、一生懸命働いているのに、どうして転職活動で「盛って」話さなければいけないのでしょう。
業務がショボいからです。
職務経歴書で輝くような業務ではないからです。
幸い、大手SIerの人間は「ゴミではない」と認識されています。
論理的思考に長けていて、地頭が良い人間と評価される傾向があります。
なので、転職活動で大失敗はしづらいのです。
とはいえ、業務を通じてまともな経験を積むことができないのは事実です。
既存のシステムの「保守・運用」で何のスキルが身に付くのでしょうか。
障害が出たら必死に対応して、報告書を書きます。
誰かが作ったバグを潰すために、パートナー企業に指示を出します。
パートナー企業の成果物を「レビュー」しますが、コードレビューしているわけではなく、テストの結果報告書をレビューするのです。
資料をじっと見て、ツッコミを入れていきます。
これはスキルではなく、イチャモンです。
30代半ばまで給料上がっていって、辞められなくてやばい
こんなしょうもないSIerですが、給料は上がり続けます。
30代半ばまでノンストップで上がり続け、そこからは昇給が止まっていきます。
給料が上がるので転職に踏み切れず、上がりきった頃には市場価値がない。
年功序列の日本の大企業に通じるものですが、昇給と安定の誘惑に勝てずに、不満を抱えながらもSIerを脱出できない人はものすごくたくさんいます。
毎日毎日遅くまで働いて、詰める・詰められるのせめぎ合いです。
心理的安全性なんてありません。
他人の成果物に「ツッコミ」を入れないと、自分に価値がないと思われてしまうので、とにかく何か「指摘」を入れます。
指摘の件数が「品質の評価指標」になるのです。
意味がわかりませんが、指摘がでないと「おかしい!レビューが甘すぎるに違いない!」と言われます。
よくわからない、およそ合理的とはいえない環境で日々神経をすり減らし、給料が上がり、市場価値はなくなり、転職できずに永遠にSIerでストレスを抱えて働くことになるのです。
高齢社員が使えなさすぎてやばい
SIerにいる40代以降の社員の半分はゴミです。
何の価値もありません。
「やってますか?」
「できてますか?
「どうなってますか?」
「やってください」
と他人に指示を出すだけのロボットのような連中がいます。
「やってますかbot」です。
この人たちは自分では何も考えず、「他人を管理すること」「他人に指示すること」で自分に存在意義があるかのように見せようとしています。
何の価値もありません。
とにかく自分が仕事をしないことに全力を尽くし、些細な仕事でさえ他人にやらせようとします。
何かを思いついたら全て他人に指示をして、管理しようとします。
自分では何も考えません。
こういうゴミみたいな社員が半分くらいいるのがSIerの現状です。
botなんだから、こっちもbotで返しましょう。
「お前は何をやってますか?」
SIerの文化に染まってやばい
SIerの中にいると、SIerのおかしな文化に染まってしまいます。
どう考えてもやばいのに、やばさに気付けなくなってしまいます。
自分の業務に疑問を抱かなくなります。
私のように批判的な目でSIerを眺め続けるのも辛いですが、思考停止でSIerマンセーになっている人も同じように辛いと思います。
一生SIerから脱出もできず、自分たちが正しいと信じて、毎日一生懸命、不毛な業務で消耗し、大切な時間を失っていくからです。
SIerの中でも、SIerの文化に疑問を持つ人は割といます。
「この会社やばいんじゃないか」
という人もいます。
ですが、大半の人は諦めていきます。
よくわからない慣習や、変革への大きな壁に阻まれて、自分を納得させてSIerの中に埋もれていきます。
本気でSIerが嫌な人は「SIerを変えよう」などとせずに、会社を辞めていきます。
こうしてSIerの中に残るのは、SIerの文化に染まった人、諦めた人、思考停止な人だけになるのです。
だって、SIerは絶対に変わらないから。
絶対に変われないからです。
SIerが変われない理由
SIerが変われないのは強力なトップダウンの構造ができあがっているからです。
ボトムアップで何かを提案しても小さな範囲でちょっと何かが変わる程度です。
全体の文化に影響は及ぼせません。
部長・本部長・役員レベルの人が危機感を持って、現代の技術にキャッチアップして初めて、SIerの古臭いスタイルは変わりますが、そこまでいくとほとんどの人はSIerに染まりきっているし、その年になって新たしいテクノロジーの勉強を続けている人はいません。
その世代の人が
「今回の刷新プロジェクトはテストから書こう。テスト駆動で開発して、リファクタリングしていこう」
みたいな提案をすれば、下はしっかりと動くのですが、そんなことを言える人はいません。
そもそもTDDを知らないでしょう。
SIerは変わりません。
完全なるトップダウンのヒエラルキーが出来上がっていて、意思決定層が勉強不足だからです。
なので、「SIerがやばい」と感じている人はさっさと転職しましょう。
この長い記事をここまで読んでくれた人なら、意志は固いはずです。
さっさと転職サイトに登録して、エージェントと相談し、良い条件があれば別の会社に移りましょう。
沈みゆくタイタニック号で、いつまで必死になって働くつもりですか?
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