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感謝のプログラミング 10000時間

たどり着いた結果(さき)は、感謝でした。

伊坂幸太郎全部読んだ俺が、苦渋の判断で伊坂初心者にオススメの3冊を厳選してみる。

感想文
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大学4年生のときに、伊坂幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」をたまたま読んだ。

散りばめられた伏線と、皮肉がきいた洒脱な台詞。
出だしから一気に引き込まれた。

たとえば、アヒルと鴨のコインロッカーの台詞にこんなのがある。

「神様を閉じ込めるんだ」

なんとなく、意味がありげなこのセリフ。
こんなセリフが最初の方に出てきて、それが全て伏線になっている。

そして、散りばめられた伏線が、最後の最後で一気に回収される。

「人を慰めるような、告発するような、不思議な声だろ。あれが神様の声だよ」

「人というものは、慎重にことを運ぶべき時に限って、行動を急いでしまうのかもしれない」


一つ一つのセリフは読んでてどこか切なくなるような、悲しくなるような、物憂げな雰囲気が漂っている。

何気ないセリフも実は伏線で、それが最後に全てキレイにつながってくる。

シリアスな展開だったとしても、話が終わる頃には目の前に晴れやかな空が広がっているような気持ちになれる。

そんな気分にさせてくれるのが伊坂作品だ。

自分は大学まで、小説は全く読まなかったんだけど、伊坂幸太郎と出会って本を読むのが好きになった。

あそこで伊坂作品に出会ってなかったら、今の俺は、本を読む人間になってはいなかった。
そういう意味で、伊坂作品は俺の価値観を変えてくれたとも言える。

本を読むのが好きになったからだ。


さて、年末になると「年末に読みたい○○本8冊」とか、「必読!9連休に絶対読むべき10冊」みたいな記事がたくさん出てくるけど、正直8冊も10冊も読めるはずない。みんな忙しいからだ。

だから、本当は5冊でも10冊でも勧めたい俺が、いろいろと悩んだ挙げ句選んだ3冊だけ紹介する。
この記事が伊坂幸太郎初心者に届くといいけど。


では、さくっと紹介していこう。

チルドレン

チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

けっこう悩んだけれど、「伊坂幸太郎を初めて読む」という人にはこの「チルドレン」がいいと思う。

短編小説のように見せた長編小説、というか、まぁ短編は短編で、一つ一つはいい区切りで終わっているんだけど、短編同士が絡み合って、一つの大きな物語を作っている。

最初から300ページ以上ある長編小説を読む場合は覚悟が必要かと思うが、このように短めにまとまった本であれば、きっと気軽に読めると思う。

隙間の時間でも楽しめて、しかも伊坂節が散りばめられている。
そういう意味で、伊坂初心者にはまず、「チルドレン」を勧めたい。

伊坂作品はキャラクターが魅力的なのが特徴だが、中でも「チルドレン」の陣内の魅力はずば抜けている。

「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ」

とか、カッコイイ台詞が出てきて、実はこれも伏線だったりするから面白い。

「そういうのはさ、スランプ中のバッターに、キャッチャーのサインを盗んで教えるのと一緒なんだよ。その場しのぎなんだ。選手に本当に必要なのは、狂ったバッティングフォームを直してあげることなのに」

というのは、家庭裁判所の調査官である陣内が、子供について語る言葉。


普通に泣ける場面もあって、やっぱりこれが初心者にお勧めの一冊です。

「俺たちは奇跡を起こすんだ」
何度も騙されても、少年たちが更正することを期待して。

ちなみに、Amazonではこんな感想が。

登場人物も、セリフも、ストーリーも、構成も。
全てが何気なく、おかしく、鋭く、心地いい。
これが、伊坂幸太郎作品か!と感動しました。

不自然な動作や謎をいくつも残していって、最後に「実は・・・」ってのを持ってくるこの爽快感!
読了後の軽やかな気持ちはくせになりそうです。

アヒルと鴨のコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

迷った。すごく迷った。

「オーデュボンの祈り」か「ラッシュライフ」か。あるいは「陽気なギャング」か。
すげーーー迷ったんだけど、やっぱり2つ目に挙げるならこれ。

「アヒルと鴨のコインロッカー」

河崎という登場人物がとにかく面白い。カッコいい。

死に向かって生きているような、どこか達観しているような、それでいてひょうきんな。

そんな河崎の魅力に一気に引き込まれてしまう。

「一緒に本屋を襲わないか」

いきなり、ちょっと噴出すような会話から物語は動き出し、一度読んだら止まらなくなる。

これが僕が初めて読んだ伊坂作品で、「伊坂幸太郎にハマりたい!」という人にはぜひとも読んでほしい。

「裏口から悲劇は起きるんだ」

これもまた、散りばめられた伏線が秀逸な作品で、最後は綺麗に伏線が回収される。

ちなみにAmazonにはこんな感想が。

<ミステリーと青春群像のほどよい調和,>

村上春樹っぽい文体や世界観で奇妙なミステリーが展開される、一方で現在と過去が交錯しながら
ラストに向けて謎が解き明かされていく収束感がある。ギミックに凝った作りとどこか日常を逸脱したキャラクター
おおよそ大学生あたりを主役に据えたストーリーラインは作者の十八番ですが
主人公が1つの物語に後から参加したというスタンスが面白くも切ない。

ミステリーとしても青春ものとしても嫌みなく完成度が高く、地味ながら伊坂作品ではいまのところ一番好きな作品かもしれません。

重力ピエロ

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

三冊目にオススメしたいのはコレ。

重力ピエロ。

春が二階から落ちて来た。


というハッとさせられる冒頭から引き込まる。

「春」という主人公の弟の純粋な心、そして家族愛が心に響く。

「重力ピエロ」ではガンジーの話が出てくるんだけど、思わずガンジーの映画まで見てしまったw


素敵な台詞も全体的に散りばめられていて、本の終わりに近づいたときに、終わるのが寂しくなった。

まだ物語が続いてほしいと思った。

「人間はさ、いつも自分が一番大変だ、と思うんだ」

「何のことだ」

「不幸だとか、病気だとか、仕事が忙しいだとか、とにかく自分が他の誰よりも大変な人生を送っている。そういう顔をしている。それに比べれば、あの鳩のほうが偉い。自分が一番つらいとは思ってもいない」

伊坂幸太郎は、「人間ってのはさ」を語らせると本当に面白い。

「気休めっていうのは大切なんだよ。気休めをバカにするやつに限って、眉間に皺が寄っている」

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

軽やかな台詞の裏に潜む、重い背景。


家族の愛。兄弟とは。血のつながりとは。
そんなことも考えさせられる。

読み終わった時は、青空を見上げたくなるような気持ちになれる。

番外編

「ラッシュライフ」にも実は名言がすごく多い。
「誰だって人生のアマチュアなんだよ」という台詞とか、もうずっと頭の中に残ってる。
名言だけでも知ってほしい。

「でもな、人生については誰もがアマチュアなんだよ。そうだろ?」
 佐々岡はその言葉に目を見開いた。
「誰だって初参加なんだ。人生にプロフェッショナルがいるわけがない。まあ、時に自分が人生のプロであるかのような知った顔をした奴もいるがね、とにかく実際には全員がアマチュアで、新人だ」

あとは、こういうのとかね。

「優しさ、ですか?」
「優しいって字はさ、人偏に『憂い』って書くだろう。あれは『人の憂いが分かる』って意味なんだよ、きっと。それが優しいってことなんだ。ようするに」
「ようするに?」
「想像力なんだよ」

こういううまいこと言ってるのに全然嫌らしくない台詞がすごく好き。
やっぱり初期の伊坂作品は本当に本当によかった。
ラッシュライフ (新潮文庫)

全然話変わるけど、村上春樹のノルウェイの森の永沢さんが好きな人。
そんな人も伊坂作品を気に入ってくれるんじゃないかな、と思っている。

「あれは努力じゃなくてただの労働だ」と永沢さんは簡単に言った。
「俺の言う努力というのはそういうのじゃない。努力というのはもっと主体的に目的的になされるもののことだ」

永沢さんカッコいいよね。
どこかの機会で村上春樹編の記事を追加したい。


大学生は、「砂漠」を一回読んでみるのもいいかも!

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

締めのこの台詞もすごくいい!

「学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」

社会人になったときこそ、この台詞が染みるよね。